「法令遵守」が日本を滅ぼす

「法令遵守」が日本を滅ぼす (新潮新書)

「法令遵守」が日本を滅ぼす (新潮新書)

郷原信郎
郷原 信郎(ごうはら のぶお、1955年3月2日 - )は、日本の元検察官、弁護士。郷原総合法律事務所代表、名城大学コンプライアンス研究センターセンター長・教授、総務省顧問、日本郵政ガバナンス検証委員会委員長。

広島地方検察庁特別刑事部部長、長崎地方検察庁次席検事、東京地方検察庁八王子支部副部長、桐蔭横浜大学大学院法務研究科教授などを歴任した。

1955年(昭和30年)、島根県松江市生まれ。小学生、及び中学生時代は広島県で過ごした。島根県立松江南高等学校を経て、東京大学理学部(地質学)卒業。大学卒業後は三井鉱山に入社したが、1年半で退社した。1980年(昭和55年)、司法試験に合格し、司法修習終了後の1983年(昭和58年)、検事に任官した。

公正取引委員会事務局審査部付検事、東京地方検察庁検事などを経て、広島地方検察庁特別刑事部の部長や長崎地方検察庁の次席検事、東京地方検察庁の八王子支部の副部長を歴任した[1]。また、法務総合研究所では研究官や教官を務めた[1]。2003年から桐蔭横浜大学の大学院にて特任教授を務め、2005年には、同大学の大学院の法務研究科(いわゆる法科大学院)の教授とコンプライアンス研究センターのセンター長に就任した[1]。

2006年に検事を退官し、2008年に郷原総合法律事務所を設立した[1]。



国家公務員倫理法→官庁の公務員と民間人との接触が少なくなり、官庁側の認識が経済社会の実情とズレてしまっている?


抽象的に法令遵守を宣言し、社員に厳命するだけの経営者の動機が、命令に反して社員が行った違法行為が発覚した場合の「言い訳」を用意しておくことに過ぎないこと、
法令遵守によって組織内には違法リスクを恐れて新たな試みを敬遠する「事なかれ主義」が蔓延し、モチベーションを低下させ、組織内に閉塞感を漂わせる結果になっていること


官庁側にとっての談合の「メリット」:受注企業の遂行能力を評価するシステムが確立されていないので、談合によって他社の後ろ盾を得た会社に頼むほうが安全。
その他いろいろ


刑法の談合罪が適用されなかった理由:「公正なる価格を害する目的」「不正の利益を得る目的」のいずれかの主観的要件を満たす談合が対象


独占禁止法GHQ指導下で、アメリカ型の競争至上主義を目指すために制定

朝鮮戦争→「とりあえず自由競争は置いといて、日本の経済を強化せねば(アメリカ)」→S28改正で弱体化、公取委も有名無実に

偽牛缶事件→消費者保護法等が当時なかったため、独占禁止法で取り締まり(独禁法が消費者保護的性格を持つように)

石油ショックカルテルで値上げ→独禁法で取り締まり

米政府「独禁法強化してカルテル取り締まってくれ」→厳罰化→公然と談合を行うことは困難に→「民主的談合」から「天の声型談合」に→贈収賄が顕著に


業務屋:談合担当。捕まっても口を割らないw


包括規定の活用→恣意的な法運用の可能性?
個別の案件に対応した法改正→根本的な解決になるのか?


日本のインサイダー取引規定:情報取得と売買の因果関係を考慮せず、情報取得後の売買全てを禁止するが、その代わり罰則は軽い→その後罰則は強化されたが、因果関係を明確にしない適用はそのまま


インサイダー取引規定を利用した買収潰し→買収する人間に会社の株が上がる(別の第三者がその会社の株を買う)という情報を与えてやればいい


法執行者の人材不足、経験不足


建築基準法:最低限の基準→建築確認制度で確認

建築士を「信頼」し、最低限の確認
車検などと異なり、一度通ればずっとOK
元々木造一戸建てなどを対象にした法律
高層ビルなどには適さない

建築確認業務 1998年に民間へ 民間の建築確認業者設立(天下りが多い) 


結局のところ、建築基準法は安全性にほとんど寄与せず、施工者等の倫理観で維持されていた。


新基準→すでにある建物には適用されず→「耐震基準を満たしてない建物(施行前のもの)もあるわけだし、テキトーでいいんじゃね?」→新しい建物でも厳格に守られていない


耐震偽装事件に関与した人物・会社

姉歯一級建築士
イーホームズ(民間確認業者)
ヒューザー(不動産業者)
木村建設→鉄筋量減らすように指示
総合経営研究所→鉄筋減らして低価格ホテルを


不正車検→そもそもごくわずかな区間を運転するためだけに大型免許を必要とする現行の制度に問題


パロマ社「製品の欠陥ではなく、何者かが不正改造を加えた結果」そんなバカなw


メーカーの不誠実な対応の一因は、その方が裁判で有利だから


国家公務員倫理法
公務員は利害関係のある事業者とは割り勘であっても酒席を共にしてはならない


毎日新聞ライブドア事件を批判→東京地検に出入り禁止


マスコミが合法か非合法かにこだわる理由:リスクの最小化(合法・非合法に基づいた報道をすれば名誉毀損等で訴えられるリスクが少ない)


検察の仕事:元来、犯罪であることが明確な事件への対処が仕事。「犯罪かどうか」の判断が委ねられるようなケースは稀。「検察の仕事はゴミ掃除のような地味な仕事」

特捜検察(東京地検特捜部など)は例外的な存在

隠退蔵事件捜査部

昭電疑獄事件

造船疑獄事件

→政治権力者の不正をただすという性格を帯びた


議員の仕事の中心が国会での活動から関係省庁への働きかけなどへ
→贈収賄での立件が困難に(政治活動への対価とみなせる?)