ノロウィルス

ノロウイルス - Wikipedia


ノロウイルス(Norovirus)とは非細菌性急性胃腸炎を引き起こすウイルスの一種である。カキなどの貝類による食中毒の原因になるほか、感染したヒトの糞便や嘔吐物、あるいはそれらが乾燥したものから出る塵埃を介して経口感染する。ノロウイルスによる集団感染は世界各地の学校や養護施設などで散発的に発生している。「NV」や「NoV」と略される。


通常、ウイルスについての詳細な研究を行うには適切な 動物培養細胞を探して感染させ、ウイルスを増殖させることが必要であるが、ノロウイルスについては実験室的に増殖させる方法がまだ見つかっていない。このため、検査や治療方法に対する研究が他のウイルスと比べて格段に遅れているのが現状である。


ノロウイルスはヒトに経口感染して、十二指腸から小腸上部で増殖し伝染性の消化器感染症感染性胃腸炎)を起こす。毒素は分泌せずに十二指腸付近の小腸上皮細胞を脱落させ[2]特有の症状を発生させる。死に至る重篤な例はまれであるが、稀に十二指腸潰瘍を併発することもある。特異的な治療法は確立されていない。感染から発病までの潜伏期間は数時間〜数日(平均1〜2日)で、症状が収まった後も便からのウイルスの排出は1週間程度続く。


2007年5月に報告された厚生労働省食中毒統計による2006年の食中毒報告患者数は、71%がノロウイルス感染症である[3]。ヒトへの感染に於いては血液型で感染率に差があり、血液型抗原であるH(O),A,Leb型抗原に吸着されやすい事から、O型は罹患しやすくB型は罹患しにくいことが報告されている[3]が、ウイルス株による差異もある。ヒト以外では発症しないとされ、発症機序を含め十分に解明されていない。


ノロウイルスによる食中毒はカキやアサリ、シジミなどの二枚貝によるものが最も多いと言われてきた。これは、カキを生食する機会は冬場が多いこと、比較的高率でカキからウイルスが検出されたこと、などが理由と考えられている。


ノロウイルスは60℃30分の加熱では感染性は失われず、85℃以上1分間以上の加熱によって感染性を失うため、特にカキなどの食品は中心部まで充分加熱することが食中毒予防に重要である。生のカキを扱った包丁やまな板、食器などを、そのまま生野菜など生食するものに用いないよう、調理器具をよく洗浄・塩素系漂白剤による消毒をすることも大事である。


なお、2010年現在ノロウイルスに対する有効なワクチンは開発されていない。また、このウイルスに対する免疫は感染者でも1-2年で失われるといわれている。原因は免疫抗体価低下説やウイルスが変化するため抗原性が変化するなどの説があるが、まだ確証は得られていない。このためワクチンの開発には困難が予想される。


2006年以降、ほぼ毎年冬に日本で流行している。過去最悪の患者数を出し、国立感染症研究所によると2006年は感染者数が1000万人を超えると予想されている。[1]。また、本邦の食中毒統計(平成17年度版)によると全食中毒患者の33%を占めており患者数では最大である。