99%のための経済学

著者は南米(アルゼンチン、チリ)での新自由主義の展開に詳しい



第一章 「新自由主義サイクル」の罠

第二章 労働市場をどう理解し、どう変えるか

第三章 TPPの理論的批判

第四章 「共生経済社会」の構想





第一章 「新自由主義サイクル」の罠



第二章 労働市場をどう理解し、どう変えるか


新古典派労働市場理論

最低賃金などの政府規制や労働組合の活動は賃金を均衡水準以上に引き上げて失業を発生させ、労働者に不利益をもたらす


新古典派 19世紀末の限界革命前後の先駆者、第二次大戦後の新古典派総合、マネタリズム、合理的期待形成学派、新しい古典派


効率賃金

1835 ユーア『製造業者の哲学』

1970-80年代にニューケインジアンやネオマルキシアンがまとめる







第三章 TPPの理論的批判


応用一般均衡モデル(CGEモデル)

内閣官房EPAに関する各種試算』


CGEモデルの例

GTAP、LINKAGE

新古典派の理論に基づく


ハーバーガーの小三角形


CGEモデルの問題点

価格弾力性が恣意的になりやすい

基準年度のデータに沿うように調整されるだけで、時系列データとの整合性は考慮されない

非現実的な仮定(多くの場合、完全雇用、貿易収支一定、資本移動不在、財の国別差異、財政収支一定)


アーミントンの仮定 生産された国が違うと消費者の選好により代替が不完全に


『社会的に意味のある政策分析―開発途上世界のための構造派応用一般均衡モデル』




第四章 「共生経済社会」の構想


比較優位産業への特化

地理的な移動や転職を前提とするので現実的でない


経済成長 内需主導型と輸出主導型

内需主導型 実質賃金↑→消費↑→投資↑→経済成長

ただし実質賃金を上がると費用も増えるので、利潤が圧迫されて投資が減り、純輸出も減る

輸出主導型 実質賃金↓→投資・輸出↑→経済成長


EU全体は内需主導型

EU内の小国や中国・ブラジルは輸出主導型

日本やアメリカは調査によって分類がまちまち


世界の全ての国が輸出主導で成長を続けるのは不可能


米国では民主党の下院議員を中心として、「貿易改革・説明責任・開発・雇用法案」

多様な利害に配慮した「規制された公平な通商」


ケインズICU構想

特定の国が貿易で儲ける構造を是正



FEC自給圏 内藤克人が提唱

食糧(Food)、エネルギー(Energy)、医療・介護・福祉等(Cure)

多少割高でも地元のものを利用


上級財 所得が増えるほど需要が増える

下級財 所得が減るほど需要が増える


「辞書編纂型の選好理論」

辞書には最も基本的な意味から順に書かれている

所得が増えるに従って、上級財を購入するようになる


再分配によって下層の所得を引き上げれば、上記のFEC自給圏も実現しやすいのではないか