グローバリゼーション・パラドクス

グローバリゼーション・パラドクス: 世界経済の未来を決める三つの道

グローバリゼーション・パラドクス: 世界経済の未来を決める三つの道

序章 グローバリゼーションの物語を練り直す

第一章 市場と国家について―歴史からみたグローバリゼーション

第二章 第一次グローバリゼーションの興隆と錐体

第三章 なぜ自由貿易論は理解されないのか

第四章 ブレトンウッズ体制、GATT、そしてWTO−政治の世界における貿易問題

第五章 金融のグローバリゼーションという愚行

第六章 金融の森のハリネズミと狐

第七章 豊かな世界の貧しい国々

第八章 熱帯地域の貿易原理主義

第九章 世界経済の政治的トリレンマ

第十章 グローバル・ガバナンスは実現できるのか?望ましいのか?

第十一章 資本主義3.0をデザインする

第十二章 健全なグローバリゼーション

終章 大人たちへのお休み前のおとぎ話




序章 グローバリゼーションの物語を練り直す


1997年 前著『グローバリゼーションは行き過ぎか?』
グローバリゼーションに好意的なIIEから出版


2007年 共著論文『金融グローバリゼーションはなぜ失望に終わったのか?』


本来なら発展途上国が投資を受けることで便益を得るはずだが、
投資を受けた国は発展せず、受けない国が発展している


ポール・サミュエルソン 中国の利益はアメリカの犠牲による
ポール・クルーグマン 低所得国との貿易が豊かな国の不平等化に影響
アラン・ブラインダー 国際的なアウトソーシングが米国の労働者に混乱
マーティン・ウルフ 金融グローバリゼーションに深い失望
サマーズ 各国の規制が底辺への競争に向かう、国際的な労働基準の必要性
ジェセフ・スティグリッツ グローバリゼーションを激しく攻撃


グローバリゼーションの崩壊
1914年の金本位制の崩壊が最初


ブレトンウッズ体制は上手く機能した
中国やインドはそれに近い体制を保っている?



第一章 市場と国家について―歴史からみたグローバリゼーション



年表

1468年 ポルトガルがゴメスにアフリカとの5年の貿易独占権を付与
1776年 アダムスミス『国富論
1858年 東インド会社廃止


アダムスミスは重商主義(主権と商業的利益の結びつき)を攻撃


「取引費用」の概念
取引費用を削減する3つの制度
長期的関係、信念体系、第三者の強制力


大きな政府を持つ国ほど市場が発展する
デヴィッド・キャメロンの論文
なぜ先進国の公的部門は急に拡張したのか


1870年 11%
1920年 22%
1960年 28%
2000年 40%


米国、日本、豪州は低め(30%)
欧州は高め(特にスウェーデンとオランダ)
国の経済規模が大きく、貿易相手国との距離が遠いと政府の規模は小さい
社会保険動機 国際市場からの圧力に晒されるとリスクへの補償を求める



第二章 第一次グローバリゼーションの興隆と錐体


17〜18世紀 世界貿易は1%ずつ成長
19世紀 4%ずつ成長

19世紀は現在以上にグローバル?


リカード アダム・スミスの思想を継承


1846年 イギリスが穀物輸入の関税を撤廃
労働者と資本家は好意的


1860年 コブデン=シュヴァリエ条約(最恵国待遇を含む)


1861-66年の南北戦争以来、米国は高関税
南北戦争以前は、国際競争力の高い農業主体の南部は自由貿易支持、
国際競争力の劣る工業主体の北部は保護貿易支持


1870年代 ビスマルクによる関税引き上げ
以降、保護主義に転じた国の方が貿易が活発に



第三章 なぜ自由貿易論は理解されないのか


ヘンリー・マーティン
1701年に自由貿易論を展開


比較優位
インドが英国より織物と工業製品の生産性がともに低くても、
織物の生産性が相対的にマシなら、織物を売って工業製品を買うことで
国内で工業製品を生産するより利益が出る


自由貿易をさらに進めても利益が小さい
しかも大きな所得移転を伴う
51ドル得する人間と50ドル損する人間が出る



第四章 ブレトンウッズ体制、GATT、そしてWTO−政治の世界における貿易問題


デクスター・ホワイト
米国の財務官僚
ケインズと共にブレトンウッズ体制の立案に寄与
大恐慌の失敗が前提、自由貿易に懐疑的


ケインズ1920年代は自由貿易を支持
1930年代以降は現実路線


GATT
抜け道が多く強制力も弱いが、むしろそのおかげで
貿易自由化の利点と各国の独自の政策が両立できた


その後はより徹底した自由貿易を求めてWTO体制に移行
GATTをもっと徹底すればよりよくなるという考え


ポール・クルーグマン
2008年の講演で方向転換
「自責の念の表明」
グローバリゼーションの所得格差への影響を軽視


ジャグディッシュ・バグワティ
コロンビア大の経済学者
自由貿易の支持者



第五章 金融のグローバリゼーションという愚行


ミシェル・カムドシュ
IMFの専務理事
資本移動の自由化


アジア通貨危機
IMFは数カ月前までアジアの経済を絶賛
通貨危機後はアジアの縁故主義などが原因だとした


ケインズは資本規制は恒久的に必要と考えた
固定為替相場制の下で資本移動を許容すると、
自主的な金融政策が不可能になる


変動為替相場制ならその問題を回避できるが、
ケインズらは通貨価値の不安定さとそれに伴う貿易の不活発化を危惧


1973年以降、欧州と日本は資本規制に肯定的
米国と英国は規制緩和を主張
フランスはミッテラン時代の資本規制の失敗から米英に同調するように
「保守政権が行うのではないかと心配されていたことが、社会党政権で実現した」




第六章 金融の森のハリネズミと狐
様々な経済学者のスタンスについて解説


アルキロコス
「狐は沢山のことを知っているが、ハリネズミは大事なことを一つだけ知っている」


アイザイア・バーリン
自由主義の哲学者
ダンテはハリネズミだが、シェイクスピアは狐


一般化する傾向の強さ?
経済学ではハリネズミが多かった(特に自由貿易論者)
筆者は「狐」を自認
トービンもケインズスティグリッツも「狐」


ミシェル・カムドシュ
1996年にアルゼンチンを訪問
「成功の青写真が見えた」
3年後に経済危機




第七章 豊かな世界の貧しい国々
東アジアの成功例の話が中心

日本も台湾も韓国も、自由貿易のルールに従わなかったから発展できた



第八章 熱帯地域の貿易原理主義
ブラジルなどでの輸入代替工業化の話




第九章 世界経済の政治的トリレンマ
アルゼンチンの事例など


ハイパーグローバリゼーション、国民国家、民主政治のうち2つしか成立しない
前二者→黄金の拘束服
後二者→ブレトンウッズの妥協
グロと民主→グローバル・ガバナンス


ここでの民主政治は、財政政策による雇用対策など
前二者を採用すると、緊縮財政をせざるを得ないので、国民が犠牲になる
現在はこの状態が多い


ブレトンウッズでは後二者


国民国家を捨ててハイパーグローバリゼーションと民主政治の選択(世界政府)は?
やはり現実的ではない



第十章 グローバル・ガバナンスは実現できるのか?望ましいのか?



第十一章 資本主義3.0をデザインする




第十二章 健全なグローバリゼーション


WTOのセーフガードをむしろ拡張


中国は厄介だが、通貨の切り下げなどは自由貿易の枷をはめた結果とも言える

ある程度好きにさせれば強硬な政策を取らずに済むのでは



終章 大人たちへのお休み前のおとぎ話