ユーロ・リスク
- 作者: 白井さゆり
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2011/06/16
- メディア: 新書
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スペイン 対外債務:高 政府債務:中
イタリア 対外債務:低 政府債務:高
高リスク国:ポルトガル、ギリシャ、アイルランド、スペイン(イタリアは含まない)
政府債務よりも対外債務を重視?
政府債務も短期間の増分が大きい。
2009年 新政権発足
前政権が財政データを粉飾してEUに報告。
財政赤字の見通しを3.7%→12%に修正。
ユーロ圏とIMFによる支援が決まったが、それでも国債の売りが収まらず。
理由の一つは景気の低迷→税収減→財政再建の困難
債務残高のGDP比も減る見込みなし(未だに赤字、GDPの減少も)
自国国債の買い戻し(デット・バイバック)
EFSFから貸与された資金で自国国債を市場価格(ギリシャの場合、簿価より安い)で買い戻し。
市場価格で売る銀行・投資家は損が確定するが、自らの判断での購入なので倫理的問題は小さい。
ただしドイツは反対。
深刻な財政危機
ただし銀行が多額の借り入れをして不動産に投資し、それがリーマンショック後に回収できなくなったのが原因。
地銀の資産合計がGDPの4倍以上
それまでは年5〜6%の高度成長。リーマンショック後は3年で16%名目GDPが低下
失業率は4%(2007年)→14%(2010年)
国は銀行を援助するも資金不足に。
極端に低い法人税(12.5%)が問題に。
独・仏は20%台後半〜39%台
長期的な停滞
産業構造が古いまま
財政再建も対策が遅れがち
スペイン
リーマンショックまでは好景気
銀行の貸金の焦げ付きで痛手
再建策もそれなりに進んでいる
万が一他国の支援が必要になると、元の経済規模が大きいために支えきれないのが危険材料
失業率の高さ(20%)も不安材料
産業は大量の移民による建設業が中心(ただしバブル崩壊により建設業は低迷)
イタリア
ベルギーと共に大きな政府債務
ただしユーロ加盟時からずっと大きい
純債務国だが額は小さい
慎重な財政政策(比較的財政赤字が小さい時も景気対策を拡大せず)により債務の増加に歯止め
ヨーロッパの非正規雇用の割合
スペイン:32%
ポルトガル:23%
イタリア:15%
ベルギー
民族問題
北部のオランダ人とが離脱したがってる(南部より裕福なので所得移転で損をしている)
純債権国
インフラ、教育水準、交易環境、資源等に恵まれてる国
金融も強い(その分、リーマンで打撃)
高賃金、資本集約的産業、高い労働生産性(短い労働時間)
賃金に上限と下限。下限は物価に連動
失業率は7〜8%でやや高め
失業給付期間が長い→失業が慢性化
労働生産性が高い→高スキルが求められる→若年者・高齢者の失業増
ドイツの経常収支はユーロ導入後に向上。反対にフランスの経常収支はユーロ導入後に悪化。
ドイツ
戦後工業を中心に目覚ましい伸び
東西ドイツ統一後に伸びが鈍化
東ドイツの賃金が西ドイツの水準まで引き上げられ、コスト高に。
企業は解雇を進め失業率が高い水準で推移。
ユーロ導入後
労働組合が業界(内)横断的なので、抑制しやすい
独・墺・蘭・ルク・フィはリーマンショック前の段階で財政黒字orバランスを維持。
将来的には(景気変動を除いた)構造的赤字をゼロにする。
フランス
短い労働時間、高い賃金、強い解雇規制
高い労働生産性の伸び
労働時間を長くできないので企業側が工夫している面も
単位生産費用(一単位生産するのに必要な労働費用)=雇用者報酬/労働生産性
仏の単位生産費用はそれほど伸びていない。(ただし独はマイナス)
1982年に退職年齢を65歳から60歳に引き下げ
しかし最近は年金資金が枯渇しかけてる
2006年に引き上げを試みるも頓挫
2010年に再び着手
退職年齢60→62、年金受給年齢65→67(2018年までに)
大規模な抗議が起こるも、サルコジ大統領は諦めず(多少条件の妥協はした)
真のユーロ危機 ドイツの離脱の可能性
マルクの再導入および墺・蘭・ルク・フィでの共通通貨圏形成?
ただし現実的にはユーロほど安定が見込めないので、利点は小さい
ユーロ安が輸出に寄与するという加入の利点もある。
独立すれば通貨高になるので、輸出に打撃が。
結論:どこの国も離脱しない(笑)
最終章は為替の話。
ユーロ導入後はしばらく対ドルで下落。
米国との成長率の差(3%と4%)が効いてる?
ECBが一度介入。
最近のユーロ高
少し前にユーロ圏の国債を米国などが大量に購入→償還→ユーロ圏内の貨幣流通量↓
欧州は最低賃金が物価に連動する国が多いので、一時的な物価の上昇が連鎖的なインフレに発展しやすい
インフレ率は米国より高め
ファンダメンタルズでは1ユーロ=1.2ドルくらいが適正?
EUは基本的に各国に対して求めた財政措置の不履行に対する制裁措置を持たなかった
財政危機で方向転換