レバレッジをかけた取引の難しさ

投資は基本的に「いくら増えた」ではなく「何割増えた」で考えるべきだろう。

小遣い稼ぎが目的なら「いくら増えた」でもいいが、長期的に資産を膨らませたいのなら、元の資金に対して何割増えたかが重要になる。


そういう観点で見ると、例えば最初の資金が100万円だとして、それが110万円になった時のプラスの価値と、90万円になった時のマイナスの価値は等価ではない。

100万円が110万円になった場合、資金は1.1倍になったわけだが、90万円になった場合は0.9倍で、これは1/1.1よりも小さい値である。

すなわち、資金に比例したレバレッジをかけるのなら、0.9倍になった後に今度は成功して1.1倍に増えたとしても、元の額の99%で、「プラマイゼロ」にはならないのである。

もっと極端な例は「2倍になるかゼロになるか」で、一度でもゼロになってしまえば、その後資金を増やすことは不可能である。(まぁ資金を外部から足すという手はあるけども)


レバレッジをかけない株取引などであれば、「2倍になる確率」と「ゼロになる確率」はおそらく違うだろう。(不況下では後者が大きいかもしれないが、単純に考えれば前者の方が大きい)

為替の場合も同様で、「2倍になる確率」と「1/2になる確率」が等しく、「ゼロになる確率」はほぼないと言っていい。

つまり取引後の資金の期待値は若干プラスで、対数で考えた場合にゼロになるはずである。


ではレバレッジを大きくした場合はどうか?

仮に豪ドル/ドルのレートが1.00だったとして、上記のような理由で1.01になる確率は0.99になる確率より若干大きいが、1.1と0.9の時ほど確率は変わらないはずである。

それでも10倍のレバレッジを掛けていれば、1.01になった時には資金が10%増え、0.99になった時には資金が10%減る。

つまり対数で考えると期待値はマイナスになるはずである。


対数の底を1.1にして計算してみると分かりやすい。

資金が1.1になる確率と0.9になる確率が共に1/2なら、対数の期待値は

1/2 * log_1.1 1.1 + 1/2 * log_1.1 0.9 ≒ 0.5 - 0.55 = -0.05

になる。(計算は大雑把だけど)


つまりレバレッジをかけた「資金が10%増えるか、10%減るか」という取引は、対数で考えると不利な賭けになってしまう。


ちなみに売りポジションを取った場合はどうか?

豪ドル/ドルを売るのはドル/豪ドルを買うのと同じようなものなので、同様に期待値が正になりそうな気がする。

しかし実際は(レバレッジを掛けずに)1.0が0.9になって1割儲かる確率は、1.1になって1割損する確率よりも小さい。

「ドル/豪ドル買いと同じ」ではないのである。

「ドル/豪ドル」という指標があれば、指標の上下は豪ドル/ドルと完全に逆になるが、そのスケールは微妙に異なるので。

ゆえに売りポジションは期待値が負になるが、レバレッジを上げれば上げるほど、期待値はゼロに近づき、買いポジションとの差が小さくなる。

ただしその場合でも対数軸で考えた場合の期待値は負なので、やはり長期的には資金は減ることになる。