岐路に立つ精神医学
- 作者: 加藤忠史
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 2013/06/25
- メディア: 単行本
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目次
第一章 精神疾患解明の重要性
第二章 現代社会と精神医学
第三章 この二十五年の精神医学の変化
第四章 精神医学の歴史を振り返る
第五章 精神医学と脳科学
第六章 精神疾患の生物学的研究の現状
第七章 現在の精神疾患の生物学的研究の限界
第八章 目指すべき精神科診療の姿
第九章 なぜこれほどまでに精神疾患の解明が遅れているのか
第十章 精神疾患解明へのロードマップ
第十一章 精神疾患のゲノム研究の歴史と今後の課題
第十二章 精神疾患の動物モデルの課題
第十三章 精神医学研究の倫理
第十四章 臨床研究と基礎研究
第十五章 基礎と臨床の連携の必要性とその課題
第十六章 脳組織研究の課題
第十七章 精神医学の行方
仕事ができなくなる要因としては最大の疾患
一生のうちに一度でもかかる 三人に一人
入院患者 統合失調症が一番多い
第一章 精神疾患解明の重要性
2011年 五大疾患の一つに
気分障害の治療 九十五万人
統合失調症で入院 十七万人
国家公務員のうち、長期休職者の63%が精神疾患による
2006年 自殺対策基本法
自殺と鬱による経済損失 3兆円くらい
2004年 WHOが、2030年に最大の課題となるのはうつ病
2010年 Nature 精神疾患解明の10年
うつ病 ただの一秒も気分が休まることがない
抑うつ 「憂鬱」とは異なる
定型抗精神病薬 パーキンソン症状 遅発性ジスキネジア アカシジア ジストニア
非定型抗精神病薬 体重増加 糖尿病
1900年代 マラリア療法 電気けいれん療法(ECT) ロボトミー インシュリンショック療法
1950年代 抗精神病薬発見
1950年代 三環系
抗コリン作用 立ちくらみ 尿が出ない 目がぼやける
SSRI 中止後発現症状
1980年 米の学会がDSM-Ⅲ
日本神経科学学会 5600名
北米神経科学学会 4万人
第二章 現代社会と精神医学
疾患喧伝
薬剤を売るために、疾患とはみなされなかった症状を疾患だと言う
1990年代末の、米国の小児双極性障害とか
製薬会社から研究費を受け取っていた精神科医も加担
その後DMDDとして診断
反精神医学 40年前に一世を風靡
最近でも反精神医学を掲げる宗教団体の台頭とか(本文に記載はないがサイエントロジーのことかと)
1990年代 パニック障害の啓発
新型うつ 香山リカの著書が起源?
精神科で「正常です」とは言いにくい
穏当な診断があればそれをつけたがる
第三章 この二十五年の精神医学の変化
医師によって診断の基準が異なる
生物心理社会モデル
無難な解釈だが、逃げ道になっているという批判も
第四章 精神医学の歴史を振り返る
1900年前後 グリージンガー 精神疾患は脳の病気
フランスのモレル 遺伝子に異常が蓄積し人類は荒廃していく
優生学へ
ニュルンベルク綱領
被験者の自発的な同意が必要
1960年代 サス、レイン、クーパー 反精神医学
東大の精神科病棟 大学紛争後に25年間反体制勢力が「自主管理」
他の旧帝大でも似たような状況
第五章 精神医学と脳科学
日本では1997年ごろから脳科学に大きな投資
デキサメサゾン抑制試験
第六章 精神疾患の生物学的研究の現状
日本の精神科医 1万6千人
1割ほどが生物学的精神医学会に所属
ニューロフィードバック
デフォルトモードネットワーク
普段働いてるが課題が与えられると低下する部位
精神疾患に関連?
安静時機能的結合MRI
PETでD2阻害薬の適切な量を決める
多型 20人に1人以上
変異 100人に1人以下
多型より変異の方が疾患への影響が大きい場合が多い
2007年に2000人の双極性障害
大規模研究の流れ
統合失調症では明確な責任遺伝子はない
患者の大部分に見られるが関与の薄い遺伝子より、稀にしか見られないが関与の強い遺伝子を探す流れ
自閉症で親にはないが子供に生じる変異
第七章 現在の精神疾患の生物学的研究の限界
1950年代
ロボトミー手術時に付着する細胞を用いた生化学的研究
1971年頃問題に。精神神経学会で批判
責任遺伝子が明確でも発症メカニズムが分からないケース
副作用は小さくなったが、作用機序自体はほとんど同じ
強制水泳試験
初期には強制水泳試験で効果のあった薬剤が臨床でも有効だった
しかしその後、例外も数多く出てきた
モノアミン系の薬剤のスクリーニングとしては使える?
アストラゼネカ、グラクソスミスクラインが向精神薬の開発からの撤退を表明
初期には受容体の特異性の強い薬剤が使われたが、最近は特異性の弱いものがよく使われる
特異性が臨床での効果に直結しない
プラセボの効果が上がってきてる?
臨床試験に負担軽減日目当てで参加する人間の増加
日本の製薬会社はまだ向精神薬の開発を続けている
創薬の実績は、米国、英国に次ぐ
2007年 新たな治験活性化五カ年計画
臨床試験の質の改善、審査スタッフの増加
薬剤の承認がいくらか早くなった
第八章 目指すべき精神科診療の姿
統合失調モデルとしてケタミンを使う場合も
カウンセリングは精神科受診より金が掛かる
5分受診
第九章 なぜこれほどまでに精神疾患の解明が遅れているのか
内科の領域でも、ストレスが原因だと考えられていたもが、別の要因が重要だと分かるケースが多い
昔は精神疾患と考えられていたが、老人斑が見つかり器質的な疾患だと判明
抗NMDA受容体脳炎
統合失調症様の症状が出るが、卵巣腫瘍に対して作られる抗NMDA抗体が原因
日本には死後脳のバンクは乏しい
米国のものを世界の研究者が利用
日本でも脳バンクを作ろうという動きはある
精神疾患は動物モデルの作製が難しい
動物で精神疾患を定義するのが難しいから
第十章 精神疾患解明へのロードマップ
マウスで脳病変についてもっと調べるべき
筆者は基礎研究12年やった後に臨床研究12年
第十一章 精神疾患のゲノム研究の歴史と今後の課題
精神疾患の連鎖解析は、ハンチントン舞踏病の研究の成功を受けて1980年代に本格化
連鎖解析は偽陽性が出やすい
デノボ点変異
父親が高齢だと出やすい
(しかし、20歳で40個、45歳で100個というのは、単に期間の長さを反映してる気も。20歳と25歳の二世代なら、結局最初の人が生まれてから45年後に新しい世代が生まれた際に同程度の変異が蓄積されてそう。)
サイモンズコレクション
アスペルガーの娘のために、数百億円を寄付して設立
2700家のDNA
第十二章 精神疾患の動物モデルの課題
DISC1
第十三章 精神医学研究の倫理
エンハンスメント
第十四章 臨床研究と基礎研究
臨床研究と基礎研究のギャップ
臨床研究は人を対象とし、脳は得られないが、血は大量に得やすい。
基礎研究はげっ歯類を使うことが多く、脳は得やすいが、大量の血液は得られない。
臨床研究で適切な対照群を設定することはしばしば困難
第十五章 基礎と臨床の連携の必要性とその課題
一流誌に載った論文数
基礎研究 世界四位
臨床研究 世界二十五位
医学部大学院入学者
1988年には3分の2以上が医学部卒
2008年には4分の1
法医学などでも医学部以外の出身者が教授になるケース
医師でなくても相応の経験を積めば解剖する資格を得られる
MD・PhDの話題
ホセ・ベルガド
牛の脳に電極を指して、突進する牛を止める
1975年 精神外科を否定する決議
1979年 ロボトミー殺人事件(同意なしに手術され、医師の家族を殺害)
第十六章 脳組織研究の課題
第十七章 精神医学の行方